心月無想柳流について 前述のように、心月無想柳流は佐賀藩の伊万里の郷士・岩永源之丞正光が、父より柳生新陰流剣術を、古賀重太郎より楊心流柔術(秋山四郎兵衛を開祖とする楊心流)を学んだ後、廻国修行に出て赤穂で大国鬼平から本體楊心高木流と九鬼神流を学び、皆伝を受けて佐賀に帰り宝暦3年(1753)に各流の長所を摂って開いた流派である。柔術・剣術・棒術・小薙刀術からなる。 *高木流では半棒術(九鬼神流半棒術)として伝えられている内容が、心月無想柳流では小薙刀術となっている。 心月無想柳流は肥前の伊万里・須古地域の郷士・農民層を中心に伝承された。 佐賀藩は上級家臣の知行地が「邑」と呼ばれたが、このうち、武雄鍋島家が知行する武雄邑の邑校「講武所」で幕末に岩永伝之丞が心月無想柳流柔術を教えていた。(現在の心月無想柳流が佐賀藩の御留流と主張しているのは、この武雄邑でのことを佐賀本藩での指南と誤認しているものと思われる)現在は、武術の流派として残っているほか、長崎県平戸市の旧北松浦郡地域の島嶼部の郷土芸能の杖術としても残っている。 *現在では高木流と心月無想柳流の内容は同じとされるが、これは戦前に心月無想柳流の第九代・岩永源一が高木流第十六代・角野八平太の高弟・脇田正市に高木流を学んだことと、心月無想柳流を高木流の加納武彦が継承した(心月無想柳流第十一代宗家)ことが影響している可能性がある。 |
普門楊心流と皆木三郎 皆木三郎(号 虚舟)は昭和8年に免許皆伝を受けた後、東京の牛込に道場を開き数々の武勇伝を残した。 角野八平太の死後、宗家の継承を筒井友太郎に譲り普門楊心流を開いたのは前記の通りである。 普門楊心流を開いた皆木三郎はそれまでの伝統的な形の内容を独自の構想で再編した。 具体的には、技を十種類の取り口(状況)に分類し、 各取り口に対応した投技を十本選び、「投の形」に、 各取り口に対応した関節技を十本選び、「逆の形」に、 各取り口に対応した投技と関節技が融合した技を十本選び、「奥の形」に、 ・・・というように非常にわかりやすい体系に整理した。 (つまり、投・逆・奥というように技法別にタテに分類されているだけでなく、それぞれの形の一本目は片手を取られた状況に対応するようになっているというように、対応する状況によるヨコの分類がなされているというマトリクス図のように配列されているのである) 普門楊心流の内容は、 ・皆木三郎が高木流から再編した柔術(逆・投・奥・古伝表形・楊心・短刀捕・太刀捕) ・九鬼神流棒術から選び出した棒術十本(これには手を加えていないようである) ・皆木三郎が編み出した小太刀術 ・皆木三郎が、自分が編み出した小太刀の理合を基に、再編した半棒術十本 からなる。(後に皆木三郎から継承した井上剛によって、皆木三郎が行っていた居合を井上剛がまとめた居合が加わった) 終戦後は、神戸に帰り、接骨院と道場を開いた。 その後一時期、本體楊心高木流に戻ったが、その後、本體楊心流という名で独立した。 皆木三郎は、石を素手で打って砕くのが得意であったと伝えられる。 昭和63年死去、神戸市の須磨寺に埋葬される。 本體楊心流は、井上剛が継承し、兵庫県西宮市の本部を中心に海外9ヵ国に支部を持つまでに成長している。 |
初代 | 高木折右衛門重俊 | 寛永2年(1625)〜正徳元年(1711) |
二代 | 高木馬之輔重貞 | 明暦2年(1656)〜享保元年(1716) |
三代 | 高木源之進英重 | ?〜元禄15年(1702) |
四代 | 大国鬼平重信 | 貞享元年(1684)〜享保20年(1735) |
五代 | 大国八九郎信俊 | 生没年不詳 |
六代 | 大国太郎太夫忠信 | 生没年不詳 |
七代 | 大国鬼兵衛良定 | 生没年不詳 |
八代 | 大国与左衛門良貞 | 生没年不詳 |
九代 | 中山甚内定秀 | 生没年不詳 |
十代 | 大国武右衛門英信 | 生没年不詳 |
十一代 | 中山嘉左衛門定賢 | 生没年不詳 |
十二代 | 大国鎌治英俊 | 生没年不詳 |
十三代 | 八木幾五郎久喜 | 生没年不詳 |
十四代 | 石谷武甥正次 | 弘化2年(1845)〜明治42年(1909) |
十五代 | 石谷松太郎 | 生没年不詳 |
十六代 | 角野八平太 | 明治8年(1875)〜昭和14年(1939) |
十七代 | 筒井友太郎 | 明治39年(1906)〜昭和58年(1983) |
表之形(重之形) |
表十三本・各技につき裏技三本 計五十二本 |
霞捕 洞返 搦捕 片胸捕 両胸捕
虚例 追掛捕 戒後砕 行違 拳流 膝車 唯逆 乱勝
体之形 | 十五本 |
腰車 四ツ手 四ツ手崩 雲居返 腕流
鵲 引違 刑頭 腰折 両手止
水流 柳雪 瓢墜 鞆捕 氷入
調之形 | 表十五本・各技につき裏技二本 計四十五本 |
梅吐 車返 天返 流捕 山落
鞆嵐 袖車 両手懸 膳砕 未落
体砕 霜楓 逆捕 乱風 風折
無刀捕之形 | 表七本・各技につき裏技二本 計二十一本 |
奏者捕 一文字 柄落 向捕 廻捕 後捕 沈捕
大小捌之形 | 表十四手・裏三十手 計四十四手 |
柄砕 引捕 入捕 乱獄 抑骨
潮返 掛落 小手止 車投 四ツ手刀
刃結 透捕 掬捕 横刀
剣術 |
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(技名略)
九鬼神流棒術 | 二十三本 |
柴潜 一本杉 外シ 瀧落 虚空
傘之内 太刀もぎ 払ヒ 顧ル 小手付け
向詰 開キ 繋ギ留 附入 五輪砕
前廣 両小手 浦波 左右 差合
船張 鶴一足 五法
九鬼神流半棒術 | 六本 |
胸打 小手止 十文字 穂詰一本 柴打 乱レ打
目録
翼攻嵐 手拭〆 下駄之使方 面部之中 両手懸
五寸縄掛方 三寸縄 出血止 大小手型 妖怪見
鉄条扱 活之入方 真ノ衿〆 誘之活
中極意
(内容略)
極意
(内容略)
免許
(内容略)